フォーカル・ジストニアとの戦い~1番苦しかった頃のこと~

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茨城に戻ってきたとき、学生時代の楽譜たちは父の実家の倉庫にしまってしまいました。

今日はその楽譜たちを掘り起こしに父の実家へ。

倉庫を開けてもらうと、楽譜と一緒に大学の卒業アルバムやら寄せ書きの色紙やら手紙やら写真のパネルやらいろんなものが一緒に出てきました。

今日はジストニアの渦中で本当に苦しかった時のことを振り返りつつ、当時の気持ちをまとめました。

今まさに同じように悩んでいる方に届いたらいいと思う。

倉庫から出てきたアルバムや色紙、実は今までほとんど読んでいなかった。

学生時代、自分が思い描いたようにはならなかったから。

どんどん吹けなくなっていく自分。

こんな音が出したいんじゃない。

こんな吹き方がしたいんじゃない。

こんなの自分じゃない。

自分だと認めたくない自分への言葉を受け止められなかった。

やればやるほどだめになっていく

どうしていいかわからずもがいていた。

そんな不満と不安をエネルギーにめちゃくちゃ練習した学生時代。

そして、大学院一年目。

全く音が出せなくなった。

最初は中音域だけ。

発音が遅れる。発音するときに舌が離れない。

疲れ溜まってるのかなー精神的なものかなー

最初はそんな感じ。

それをどうにかしようともがくうちに、低音域が出せなくなった。

そして、高音域も。

「きみは演奏力に問題がある」

知ってる。

だから困ってる。

だから研究してる。

勝手に一人で孤立無援だと思い込んで、

眠れても息が苦しくなって目が覚め、

外に出れば気持ち悪くなる。

ジストニアの原因は精神ではないらしい。

でもジストニアが原因で精神をやられることはあると思う。

支えてくれる人の方が多かったと思う。

でも受け取れなかった。

ようやく観念して音楽家専門外来を受診したのは、吹けなくなってかなり時間が経ってからだった。

なぜか。

ジストニアだと認めるのも勇気がいるから。

自分の吹き方がよくないだけなのかもしれない。

そもそも当時の資料では復帰したという話に出会えなかった。

事実上キャリアの終わりなんて書いてあるものさえあった。

復帰した紹介があったとしても誰もが知るような巨匠と呼ばれる方々ばかり。そんな人たちがなるものに自分なんかがなるわけない。

このままもう吹けないかもしれない。

修士どうする

せっかく院まで行かせてもらったのに

病院で受診して、ジストニアだろうと言われた時はなんとも不思議な気持ちだった。

ある種の安堵感。

やっぱそうなのか。

ここで少し吹っ切れた。

だったら復帰してやろうじゃねーか。

そこまでにある程度勉強していたので、なんとなく道筋は見えた。

大元の原因を麻酔やボトックスで止めて、新しく正しい動きを体に教え直す。

こんな感じなんじゃないかと。

ただ、この大元の原因とやらが厄介で。

僕は左の笑筋が原因だと診断された。

そこを麻酔で止めてアンブシュアを作り直す。

新しいアンブシュアの感覚はできる。

でも、吹けない。

口は閉じるようになった。

修了演奏には間に合うと思った。

でも、全然吹けなかった。

確かに直接的な大元の原因はそこにあったのかもしれない。

ただそれに付随して体が全体的に強張っていて息のコントロールもできなくなっていた。

吸うことも吐くことも不自由だった。

今僕が一生懸命に主張している「順番に整える」という考え方の源泉がここにある。

口だけ治ったってその口は使い物にならない。

まず呼吸から順番に整えて直していかないと何がどう繋がっててどこに原因があるのかもよくわからない。

もう息が流れてるとこを全部作り直していこう。

作り直すしかないならできあがったものがベストなものになるように。

そうしてできあがったのが今のメソッド。

修士ではこれをわかりやすくまとめて、実践事例付きで提出した。

その時提案したメソッドと今のメソッドはほとんど変わっていない。

吹けなくなった頃、首のあたりや胸骨のあたり、それから鳩尾のあたりがぎゅーっと閉まる感じがした瞬間があった。

それからこめかみのあたりがいつも痙攣してる時期があって、顎の筋肉が強張って顎関節症のような感じになった。

でも痛みは全くない。

それがジストニアの特徴でもあるようだ。

足の筋肉も柔軟性がなくなってかたくなったので、頻繁にストレッチして。

それでもふくらはぎがずっと張っている。

もう全身調子悪い。

なんだこれ。

病院では筋肉を緩める薬を処方してくれた。

それで体が緩んでいる隙にストレッチ。

でもこの薬、気分も下がってしまってあまりいい感じじゃない。

ほとんど飲まなくなってしまった。

ただ薬が効いている間は鳩尾のあたりが緩んで呼吸が楽になる。

やっぱり最初にきゅーっとなったあたりが緩めば直せるんじゃないか。

でもどうやったらそれができるかもわからない。

伸ばしたって伸びやしない。

この体には何が起きてるんだろう。

吹けなくなっていろんなことが起きた。

演奏の仕事なんか当然できない。

教え方はむしろスキルアップした。だが吹けない人は望まれていないこともある。

ユーフォニアムは僕のアイデンティティだった。

これがなくなった僕は一体何者なんだろう。

「音の出なくなったCDラジカセ〜」と週一でまわってくる廃品回収車。

僕も回収してくれ〜と一人でぼやきながら過ごしていた

その時はまた吹けるようになるなんて想像できなかった。

それから月日が経って、だんだんと体が緩んできた。

まだ顎とふくらはぎは強張っているがあとはほとんど支障はない。

一番大きな転機は鳩尾が緩んだことなのかな。

当時の自分に会えるとしたら、

「大丈夫、また吹ける。でも9年かかるぞ。その間にユーフォニアムを吹いていたら経験できない素晴らしい経験があなたを待っているぞ。」

と。

今見返すとわかる。

僕が勝手に閉じこもってただけ。

すばらしい仲間がたくさんいた。

たくさんの人が支えようとしてくれて、あんまり上手に受け取れなかったけどそのおかげで今がある。

「5年後、10年後を見なさい。」

「継続は力なり。自分を信じること。」

今度は支える側で恩返し。

自分は人を頼るの上手ではなかったけど、頼ってくれる人には応えたい。

それだけじゃなくて、

吹けなくなる前の夢を叶える。

これはこの9年を耐え抜いた自分への恩返し。

楽器が吹けなくたって、何にもなくなったって、ただここにあることだけ充分

そもそも何にもないなんてのはただの錯覚。そんなの傲慢で欲張りだ。

そんな無条件の自己肯定感もジストニアの贈り物。

ただあるだけで充分。

我が子や教え子にはくどいほどに伝えていきたい。

音楽はこころ。人との繋がりで初めて成立するもの。

その上、気持ちよく音が出せたりしたらもう最高じゃないか!!!

鴇田 英之

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  • 2019 05.27
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